まえがき
序 章 三つの転機
ブルガーコフの生涯と代表作
『巨匠とマルガリータ』をめぐって
円環の時空間──プーレ、ロートマン、メレチンスキイ
第一章 時空間は循環する
内戦と狂気──短篇小説『赤い冠(病歴)』、『三日の未明に(長篇小説『赤い跳躍』より)』
地獄の火と贖罪──短篇小説『襲撃(幻燈の中で)』
「終わり」と「始まり」の間──長篇小説『白衛軍』
殺人は悪か──短篇小説『私は殺した』
償いの時空間へ──戯曲『逃亡』
「内戦もの」から『巨匠とマルガリータ』へ
第二章 悪魔の円環運動
再生の火──短篇小説『十三番地エリピト・労働者コンミューンのアパート』
報復の火──短篇小説『ハンの火』
魔の空間──フェリエトン『楽園への階段』、『丸いハンコ』、『さまよえるオランダ人』、『車輪の上の住まい』、『魔の場所』、『故人の冒険』
円環運動からの脱却──中篇小説『悪魔物語』
ブルガーコフとニーチェ
第三章 詐欺師の形象
フェリエトン『チーチコフの遍歴』
戯曲『死せる魂』
戯曲『赤紫の島』
『赤紫の島』と『巨匠とマルガリータ』
円環運動の二面性
第四章 時間を操作する(一)──中篇小説『運命の卵』
ブルガーコフとH・G・ウェルズ
赤色光線と円
ブルガーコフのダーウィニズム批判
ブルガーコフの反宗教政策批判
第五章 時間を操作する(二)──中篇小説『犬の心』
循環するプロット
ブルガーコフのダーウィニズム批判
一九二〇年代ソ連の反宗教プロパガンダと大衆雑誌
『犬の心』と大衆雑誌『工場労働の無神論者』
第六章 時間を操作する(三)──戯曲『アダムとイヴ』
『アダムとイヴ』とザミャーチン、チャペック
循環するプロット
無神論者の救済
科学者像の変遷
第七章 『巨匠とマルガリータ』の時空間とフロレンスキイの宇宙論
円環の時空間
ブルガーコフとフロレンスキイ──伝記的・思想的接点
平面の二面性──『幾何学における虚数性』前半部分
フロレンスキイの宇宙論──『幾何学における虚数性』後半部分
実数面と虚数面の間の往来──『幾何学における虚数性』の「表紙解説」
『幾何学における虚数性』と一九二〇年代
第八章 『巨匠とマルガリータ』におけるv = cの時空間
『幾何学における虚数性』から『巨匠とマルガリータ』へ
v = cと悪魔の大舞踏会
「聖母マリアの地獄降り」
「キリストの地獄降り」
第九章 『巨匠とマルガリータ』におけるv = cの時空間
「永遠の隠れ家」
「光」と「安らぎ」
因果律の逆行
夢の時空間
第十章 二元論を超えて──「第二の転機」から「第三の転機」へ
内戦もの──『白衛軍』と『逃亡』
ブルガーコフ作品と聖職者のモチーフ──『運命の卵』、『巨匠とマルガリータ』
反教権主義作家としてのブルガーコフ
反宗教プロパガンダにおける聖職者批判
「無神論者」モリエール
二元論の超克
終 章 一九三〇年代のブルガーコフ
円環の歴史観
芸術家の不死──モリエールとプーシキン
戯曲『死せる魂』の上演をめぐって
戯曲『アレクサンドル・プーシキン』の創作意図
戯曲『ドン・キホーテ』と一九三〇年代
作家像を再構築する
あとがき
注
図版一覧
参考文献
ブルガーコフ作品邦訳一覧
ミハイル・ブルガーコフ年譜
索 引
大森 雅子(おおもり まさこ)
1974年東京都生まれ。東京外国語大学外国語学部ロシヤ・東欧語学科卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。ロシア国立人文大学大学院修了(Ph.D)。日本学術振興会特別研究員(PD, RPD)を経て、現在、東京大学教養学部他非常勤講師。専門は20世紀ロシア文学・ロシア文化。
主な論文に「ミハイル・ブルガーコフの教権主義批判における二元論の超克――作家の創作活動とソヴィエト権力との関係を中心に――」(『スラブ研究』第60号、2013年)など。主な訳書に『ブルガーコフ作品集』(文化科学高等研究院出版局、2010年、共訳)、『ブルガーコフ戯曲集』(1)(2)(日露演劇会議叢書、東洋書店、2014年、共訳)など。