序論
1.オレーシャの作家生涯と『羨望』
2.ストーリー概要
3.執筆の経過と草稿の特色
4.『羨望』草稿研究史
5.本書の課題
第1章 主人公と語り手
1.語りの形式の変更をめぐる問題
2.主人公イヴァン・バービチェフと語り手ズヴェズダーロフ(第1の時期)
3.主人公イヴァン・バービチェフと語り手カヴァレーロフ(第2の時期)
4.主人公カヴァレーロフとイヴァン・バービチェフ像(第3の時期)
5.主人公カヴァレーロフと語り手の隣人(第3の時期)
6.語りの形式の変更の背後にあるもの
第2章「格下げ」と主人公化──カヴァレーロフ
1.「格下げ」の端緒
2.カヴァレーロフ像のさらなる変容
3.知識人オレーシャとカヴァレーロフ像
第3章 光と陰──アンドレイ・バービチェフ
1.敵役か「肯定的登場人物」か?
2.技術職の知識人
3.リーザ・キャメロンとの恋愛
4.父親像
5.リョーリャとの恋愛
6.ソーセージ屋
7.元ブルジョアへの妬み
第4章「反社会的」発明家──イヴァン・バービチェフ
1.イメージソースとしての『透明人間』
2.しゃぼん玉の発明
3.無益な事物の職人
4.「イヴァン・バービチェフの物語」
5.夢物語に終わる発明
6.「反社会」幻想
第5章「弱さ」の克服──ヴァーリャ
1.曖昧なヒロイン像
2.主人公イヴァン・バービチェフとリョーリャ
3.恋愛の導入(リーザ・キャメロン)
4.美しさと「弱さ」(リョーリャ・タタリノヴァ)
5.ヴォロージャによる「啓蒙」(ヴァーリャ)
6.ヴァーリャ像の正体
第6章「他者」の肯定性──ヴォロージャ・マカーロフ
1.ヴォロージャ像の肯定性
2.サッカー選手(ヴォロージャ・バービチェフ)
3.コムソモール員
4.「啓蒙」の主体
5.人間機械
6.肯定的イメージの寄せ集め
第7章「格下げ」と女性像──アーニチカ・プロコポーヴィチ
1.否定的女性像
2.場末の住環境
3.「不健康」な性愛(エリザヴェータ・クーニナ)
4.アーニチカと父
5.私的領域の存在
結論
付録
参考文献
本書に関連する刊行済みの著作
あとがき
古宮路子(こみや・みちこ)
1982年、千葉県に生まれる。モスクワ国立大学大学院文学研究科博士課程修了、PhD(文学)。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了、博士(文学)。専門は20世紀ロシア文学。特に、草稿研究、文学史研究の立場から取り組んでいる。現在、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部助教。主な著書に、『Russian Culture Under the Sign of Revolution』(共著、ベオグラード:ロゴス社、2018年)などがある。