はじめに――「祖国戦争」とドストエフスキーの父ミハイル
序章 近代化の光と影――「祖国戦争」の勝利から「暗黒の三〇年」へ
一、ナポレオンのロシア侵攻とドストエフスキーの父ミハイル
二、『知恵の悲しみ』――青年貴族たちの苦悩
三、「立身出世主義」の光と影――父ミハイルとロシアの知識人
第一章 父ミハイルと若きドストエフスキー
一、領地の購入と農奴制の問題との直面――「小ツァーリ」としての地主
二、ロシアの「教育改革」とドストエフスキー――寄宿学校で
三、文学との出会い――語学教師ビレーヴィチとロシア文学への関心
四、知識人の悲劇――『哲学書簡』の発禁とプーシキンの死
五、ドストエフスキーと『知恵の悲しみ』――ロシア知識人の考察
六、「方法」としての文学――父の横死と文学への志
第二章 自己と他者の認識と自立の模索――『貧しき人々』
一、方法としての対話――「文学」の二義性
二、『貧しき人々』の核――ヴァルヴァーラの「手記」
三、「模倣」と「身分」
四、残された問い――終わり方の問題をめぐって
第三章 欲望と権力の考察――『分身』と初期作品をめぐって
一、『貧しき人々』から『分身』へ――ベリンスキーの評価をめぐって
二、「立身出世の望み」と「欲望の模倣」――『分身』
三、権力と法の考察――「雪解け」の可能性の時代
四、権力と「父親殺し」のテーマ――『プロハルチン氏』、『家主の妻』
五、ゴーゴリとベリンスキーの論争――「臣民の道徳」をめぐって
第四章 『白夜』とペトラシェフスキー事件
一、「ペテルブルグ年代記」から『白夜』へ――「夢想家のテーマ」の深まり
二、「道化」に秘められた意志――『ポルズンコフ』
三、「良心」の痛みと改革への決意――『弱い心』
四、『白夜』に隠された「農奴解放」のテーマ
五、ペトラシェフスキー事件――ロシアの「大逆事件」
終章 日本の近代化とドストエフスキーの受容
一、クリミア戦争と日本の「開国」
二、日露戦争後の日本と「大逆事件」
三、日本の帝国化と「教育改革」
四、「大東亜戦争」と後期ドストエフスキー
注
あとがき
関連年表
索引