はじめに 危機の時代と文学──『罪と罰』の受容と解釈の変容
第一章 「古代復帰の夢想」と「維新」という幻想──『夜明け前』を読み直す
はじめに 黒船来航の「うわさ」と「写生」という方法
一、幕末の「山林事件」と「古代復帰の夢想」
二、幕末の「神国思想」と「天誅」という名のテロ
三、裏切られた「革命」──「神武創業への復帰」と明治の「山林事件」
四、新政府の悪政と「国会開設」運動
五、「復古神道」の衰退と青山半蔵の狂死
第二章 一九世紀のグローバリズムと日露の近代化──ドストエフスキーと徳富蘇峰
はじめに 徳富蘇峰の『国民之友』と島崎藤村
一、人間の考察と「方法としての文学」
二、帝政ロシアの言論統制と『貧しき人々』の方法
三、「大改革」の時代と法制度の整備
四、ナポレオン三世の戦争観と英雄観
五、横井小楠の横死と徳富蘇峰
六、徳富蘇峰の『国民之友』とドストエフスキーの『時代』
第三章 透谷の『罪と罰』観と明治の「史観」論争──徳富蘇峰の影
はじめに 北村透谷と島崎藤村の出会いと死別
一、『罪と罰』の世界と北村透谷
二、「人生相渉論争」と「教育勅語」の渙発
三、「宗教と教育」論争と蘇峰の「忠君愛国」観
四、透谷の自殺とその反響
第四章 明治の『文学界』と『罪と罰』の受容の深化
はじめに 『文学界』と『国民之友』の廃刊と島崎藤村
一、樋口一葉と明治の『文学界』
二、『文学界』の蘇峰批判と徳冨蘆花
三、『罪と罰』における女性の描写と樋口一葉
四、正岡子規の文学観と島崎藤村──「虚構」という手法
五、日露戦争の時代と言論統制
第五章 『罪と罰』で『破戒』を読み解く──差別と「良心」の考察
はじめに 『罪と罰』の構造と『破戒』
一、「事実」の告白と隠蔽
二、郡視学と校長の教育観──「忠孝」についての演説と差別
三、丑松の父と猪子蓮太郎の価値観
四、「鬱蒼たる森林」の謎と植物学──ラズミーヒンと土屋銀之助の働き
五、「内部の生命」──政治家・高柳と瀬川丑松
六、『罪と罰』と『破戒』の結末
第六章 『罪と罰』の新解釈とよみがえる「神国思想」──徳富蘇峰から小林秀雄へ
はじめに 蘇峰の戦争観と文学観
一、漱石と鴎外の文学観と蘇峰の歴史観──『大正の青年と帝国の前途』
二、小林秀雄の『破戒』論と『罪と罰』論──「排除」という手法
三、小林秀雄の『夜明け前』論とよみがえる「神国思想」
四、書評『我が闘争』と『罪と罰』──「支配と服従」の考察
五、小林秀雄と堀田善衞──危機の時代と文学
注
あとがきに代えて──「明治維新」一五〇年と「立憲主義」の危機
初出一覧
参考文献
高橋 誠一郎(たかはし・せいいちろう)
1949年福島県二本松市に生まれる。東海大学文学部文学研究科(文明専攻)修士課程修了。東海大学教授を経て、現在は桜美林大学非常勤講師。ドストエーフスキイの会、日本比較文学会、日本トルストイ協会、日本ロシア文学会、世界文学会、ユーラシア研究所、黒澤明研究会、比較文明学会、日本ペンクラブなどの会員。
主な著書と編著(ドストエフスキー関係):『黒澤明と小林秀雄──「罪と罰」をめぐる静かなる決闘』(成文社、2014年)、『黒澤明で「白痴」を読み解く』(成文社、2011年)、『ロシアの近代化と若きドストエフスキー──「祖国戦争」からクリミア戦争へ』(成文社、2007年)、『ドストエフスキイ「地下室の手記」を読む』(リチャード・ピース著、池田和彦訳、高橋誠一郎編、のべる出版企画、2006年)、『欧化と国粋──日露の「文明開化」とドストエフスキー』(刀水書房、2002年)、『「罪と罰」を読む(新版)──〈知〉の危機とドストエフスキー』(刀水書房、2000年)
(司馬遼太郎関係):『新聞への思い──正岡子規と「坂の上の雲」』(人文書館、2015年)、『司馬遼太郎の平和観──「坂の上の雲」を読み直す』(東海教育研究所、2005年)